褒めた瞬間、空気が凍る
渋谷のセンター街で女の子に声をかけてた時期、最初の頃の自分のセリフがもう聞いてられないレベルでさ。満面の笑みで近づいて「めっちゃ可愛いですね!」って言い放つわけ。
相手の反応?
顔がサーッと引いていく。目が泳ぐ。足早になる。完全に不審者扱い。あの感覚、いまだに体が覚えてんだよね。
褒めてるのに。いいこと言ってるつもりなのに。なのに犯罪者でも見るような目を向けられる日々。あの頃は毎晩コンビニのイートインでカップ麺すすりながら、何がダメなのかずっと考えてたな。
何百人に声かけて、ようやくわかったことがある。褒め方には通るやつと引かれるやつがあって、その分かれ目は言葉選びなんかじゃなかった。
なんで褒めてるのに気持ち悪がられるのか
裏の意図は5秒でバレる
褒め言葉そのものが問題じゃない。相手が反応してるのは、言葉の奥にある「こいつ何がしたいんだ」っていう気配のほう。
初対面でいきなり可愛いですねって言われたら、女の子の脳内では瞬時に防衛プログラムが起動する。ナンパか、勧誘か、マルチか、それとも単にヤバい人か。
裏の意図が透けた瞬間、どんなに丁寧な言葉でも全部汚染されるんだよね。自分がスカウトやってた頃に骨身に染みたのはまさにこれ。目的ありきで褒めると、声のトーンとか表情の微妙な力み具合とか、ぜんぶ噛み合わなくなる。口ではいいこと言ってんのに、目が獲物を追ってる。
心理学ではダブルバインドって呼ぶらしいけど、要は言葉と非言語が矛盾してる状態。受け手はこのズレを無意識にキャッチして、気持ち悪さに変換する。自分が声かけの録音を聞き返した時、あまりの噛み合わなさにイヤホン引きちぎりたくなったもんな。
上から採点してくる褒めは全部アウト
「いいと思います」「よくできましたね」「さすが!」
この手のやつが初対面で嫌われるのは、構造的に上下関係が発生するから。先生が答案に丸つけてるような空気になるんだよね。初対面の人間にそれやられたら、そりゃ引くでしょ。
アドラー心理学だと、褒めること自体が支配構造を生むと指摘されてる。褒めるという行為は本質的に「採点」であって、やり方をミスると何様だよって反感にしかならない。
スカウトの先輩から「お前の声かけ、偉そうなんだよ」って言われた時は首筋がカーッと熱くなった(笑)。でも自分の声を録音して聞き返してみたら…うん、偉そうだった。「いい感じじゃん!」って、いやお前誰だよって話。思わずスマホ閉じたもんね。
外見への直球は地雷原を裸足で歩くようなもん
可愛い、美人、スタイルいい。こういうド直球の外見褒め、初対面ではほぼ滑る。
理由はふたつあって。
ひとつは、その褒めポイントが相手のコンプレックスとかぶるリスク。自分も一回やらかしてて、「背が高くてモデルみたいっすね」って言ったら「身長がコンプレックスなんですけど」って返された。背中を冷たいもんが伝っていくあの感じ、今思い出しても手が冷たくなる。
もうひとつ。外見を褒めるってのは品定め宣言と同義なんだよ。あなたの顔面をジャッジしましたって宣言してるのと変わらない。しかも初対面でそれやる人、だいたい全員に同じこと言ってるでしょ。特別感ゼロ。婚活系の調査でも、合コンで嫌な褒められ方の上位に「隣の友達にも同じセリフ言ってた」がランクインしてるくらいだから。
路上で何百人に声かけて気づいた、ちゃんと刺さる褒め方
本人がわざわざ選んだものを褒めろ
これがスカウト時代に一番効いた方法。マジで景色変わった。
服、靴、バッグ、ネイル、髪色。生まれ持った外見じゃなくて、本人が自分の意志で選んだものにフォーカスするだけ。
「その靴めっちゃいいっすね」
たったこれだけ。でもこのひと言って、あなたのセンスいいねっていうメッセージになってるんだよね。外見褒めに見えて、実は内面に触れてる。ここがミソ。
自分の声かけの成功率が跳ね上がったのは「可愛いですね」を封印して「そのピアスどこで買ったんすか」に切り替えた日からだった。立ち止まってくれる子の数、体感で3倍。盛ってない。ほんとに。あの日、帰りの電車で思わずガッツポーズしたからね。周りの乗客がちょっと引いてたけど、知らん。
褒めた後に質問をくっつけろ
「素敵ですね」で止めると会話が即死する。相手は「ありがとうございます…」しか返せない。沈黙。気まずさ。はい撤退。この流れ、スカウト初期に何百回やったか数えたくもない。
で、自分がやり始めたのは、褒めた直後に必ず質問を足すこと。
「その髪色すげぇ似合ってますね、どこの美容室行ってるんすか」みたいな。
こうすると褒めが会話の起爆剤になる。相手も答えやすいし、ちゃんと興味持ってくれてんだなって感じてもらえるんだよね。褒め単体は一方通行だけど、質問が入った瞬間に双方向のキャッチボールに変わる。
正直この方法に気づくまで半年かかった。半年間ずっと褒めっぱなしで会話を殺し続けてた。あの無駄な日々よ…。
第一印象の逆を突くと刺さる。ただし諸刃の剣
クールに見える子に「笑った顔あったかいっすね」って言う。派手な見た目の子に「なんか落ち着きありますよね」って言う。
人って外に見せてる自分と中身にギャップを抱えてるもんで、そこを見抜かれると「この人わかってくれてる」ってなる。心理学で言うジョハリの窓の盲点領域、つまり本人が自覚してない長所に触れるから、褒められ慣れてない部分が刺激されて新鮮に響くんだよね。
ただし。
これ外した時の地獄ったらない(笑)。「おとなしそうに見えて実は…」って言いかけたら真顔で「いや、おとなしいんですけど」って返されて、自分の口がパクパクするだけの金魚状態になったことがある。あの数秒間の長さよ。体感で3分くらいあった。
だから使うなら、本当にそう感じた時だけにしとけって話。無理に逆を狙いにいくとただの的外れ野郎になるだけだから。
最も凹んだ夜と、最高にうまくいった雨の日
調子に乗ってた時期の話をする。ちょっと成績が上がってきて、声かけにも慣れてきた頃。ある日めちゃくちゃ綺麗な子が歩いてきて、自分のテンションが一気に振り切れた。
「マジで超綺麗ですね!モデルさんですか!?今まで声かけた中で一番です!」
早口でまくし立てた。
相手の顔。無。完全なる無。
「そういうの関係ないんで」って一言残して去っていった。
あの背中を見送りながら膝がガクガクしたのを覚えてる。顔が焼けるように熱くなって、しばらく足が動かなかった。頭の中グワングワンして、周りの雑踏の音が遠くなった。
後から気づいたんだけど、あれは褒めじゃないんだよ。自分の興奮を相手にぶつけただけ。目の前の子のことなんか1ミリも見てない。自分の感情を一方的に発表しただけの、ただのエゴ。
…で、逆に一番うまくいった日のこと。雨の日に傘持ってない子がいて、とりあえず自分の傘を差し出した。少し話す中で、ふと「傘ないのに走らないで歩いてるの、なんかいいっすね」って言った。何のテクニックでもない。目に入ったことをそのまま口にしただけ。
そしたらその子がふっと笑って「雨好きなんですよ」って。
あ、この感じだ、って腹の底でストンと落ちた瞬間だった。
テクニックとか褒めワードとかじゃなかった。目の前の相手をちゃんと見てるかどうか。分かれ目はずっとそこにあった。
無理に褒めなくていい
初対面で気の利いた褒めが出てこないなら、褒めなくていい。マジで。沈黙が怖くて適当に「素敵ですね」とか絞り出すくらいなら、黙ってるほうがまだマシ。無理やりひねり出した褒めなんて、相手にとっては居心地の悪いノイズでしかないから。
自分がスカウトやめた後、普通の人付き合いで一番役に立ってるのは褒めスキルじゃなくて観察と共感のほうだったりする。相手の話をちゃんと聞いて「それわかるわ」って反応するだけで、距離って縮まるんだよね。
褒めってのは相手を見てたら自然にこぼれ出てくるもんであって、よし褒めようって身構えた時点でもう不自然になってるんだよ。
路上で毎日何十人にも声かけて、無視されて、白い目で見られて、たまに怒鳴られて。そっから自分が辿り着いた答えはびっくりするほどシンプルだった。
相手に興味を持つこと。これ以外は全部小手先。
…ま、こんなこと言ったら元も子もないんだけどさ(笑)。でも褒め方のコツを100個暗記するより、目の前の人を30秒ちゃんと見るほうがよっぽど届く。自分はそれを何百回もスベって、何百回も恥かいて、やっと腹に落ちたんだよね。

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